小売電気事業の「需給調整市場」とは?
現在、日本で電力を取引する市場として、計画値に対して不足する電力量(kWh価値)を取引する「卸電力市場」が開設されていますが、2021年度以降はこれに加え「需給調整市場」が創設され、調整力(△kW価値+kWh価値の調整力)の取引が開始されます。
「調整力」とは、主に次の4つのことをいいます。
◎需要予測誤差に対する調整力
小売電気事業者は需要(電気の消費)を予測して需要計画を作る必要がありますが、需要実績と完全に一致させることはできませんので、その予測誤差に対する調整力が必要となります。
◎再エネ予測誤差に対する調整力
FIT特例制度で実需給となる日の前々日などに想定された、再エネ出力予測値と実績値との差についても、調整力が必要となります。
◎時間内変動に対する調整力
実際の需要(電気の消費)は刻々と変化し続けており、再エネの出力も刻々と変化しています。そのため、予測と実績が30分平均値で一致していたとしても、30分より短い時間では細かな変動が生じています。この「時間内変動」についても、調整力で需要と供給を一致させる必要があります。
◎電源脱落に対する調整力
電源が想定外のトラブルなどで停止する「電源脱落」の際も、トラブルなどで生じた需要と供給の差を調整力で一致させる必要があります。
需給調整市場は、以上のような需要と供給の調整を行う市場として、小売電気事業者を含む一般送配電事業者に対して、次のようなことが行われます。
・容量市場(国内全体の必要供給力(kW価値)の取引市場)のゲートクローズ後の需給ギャップの補てん
・30分未満の需給変動への対応
・周波数維持のための調整力の取引
電気は、貯められない(発電即消費)という特性があるため、一般送配電事業者は常に変動する需要(電気の消費)に対し、すぐに供給できるよう調整力をつける必要があります。
需給調整市場がその調整力を広域運用で市場取引することにより、調整力に関する競争の促進、調達コストの低減、調達の透明性、公平性が強化されることが期待できます。
この需給調整市場に参入するためには、市場参入申込を行い、専用線敷設に伴う設備工事、参入申込に対する審査を経て、需給調整市場での取引契約を結ぶ必要があります。
また、今後、需給調整市場へ「アグリゲーションコーディネーター(需要家側のエネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを統合制御し、VPPやDRからエネルギーサービスを提供する事業者の1種)」として参入する場合には、事前に「需給調整市場アグリゲータ用事業者コード」及び「需給調整市場アグリゲータ用系統コード」が必要となります。