電力を、卸電力取引市場で確保する方法
小売電気事業を営むための「小売電気事業登録申請」を行うためには、電力を供給するための電力を確保する方法を決めておく必要がありますが、その方法の1つに「卸電力取引市場」により確保する方法があります。
卸電力取引市場とは、通常は「日本卸電力取引所(JEPX)」から電力の卸を受ける場合を指します。

JEPXとは、電力自由化に伴う2003年の第3次電気事業制度改革の一環として設立された、電力の売買を行える、国内唯一の会員制の卸電力取引市場のことをいいます。
電力は貯蔵が出来ないため、常に需要(消費電力量)と供給(発電量)を一致させる必要があります。
電力が自由化される前は、大手電力会社10社が発電、送電、小売の3つの事業を一貫して行う垂直一貫体制が採られていたため、電力の卸売市場はこれらの一般電力事業者による長期の相対取引が大半でした。しかし、自由化によって発電、送電、小売の3事業が独立した事業となったため、相対契約または自己保有の電源を補完するための手段が必要とされるようになりました。
そこで、事業者の供給量と需要量の季節ごと・時間ごとに起こる電力の過不足分を、市場で販売・調達できるよう、JEPXが設立されました。
JEPXでは電源投資判断の指標となるような、信頼性の高い季節別、曜日別、時間帯別の卸電力価格を形成し、過不足が生じた際に事業者が電力の販売や調達を行える市場を充実させることを目的とされています。
JEPXでは現在、次の市場及び内容で電力が取引されています。
- スポット市場(一日前市場)
翌日の電力を30分単位として、計48商品に分けて取引する市場です。
取引方法は「ブラインド・シングルプライスオークション(入札価格でなく約定価格での取引)」です。 - 当日市場(一時間前市場)
30分単位の商品ごとに、ザラバ(値段優先で、条件が同じであれば発注が早いものから売買を成立させるオークション方式)で取引される市場です。
24時間開場されており、毎日17時から翌日の取引が開始されます。各商品とも受け渡しの1時間前まで取引することができます。 - 先渡市場
将来の一定期間に受け渡す電気を取引する市場です。
約定後に売買当事者が顕名となる「定型取引」と、全て匿名で行われる「市場取引」が存在します。
提供される商品には、月間の昼間型と24時間型、週間の昼間型と24時間型の商品があります。
取引方法は、ザラバ(値段優先で、条件が同じであれば発注が早いものから売買を成立させるオークション方式)です。 - 分散型・グリーン売電市場
JEPXの取引会員ではない方でも、自家用発電設備やコジェネ発電の余剰分など、小規模発電や不整形の、いわゆる「出なり電気」を、販売価格、販売量、売り条件(期間、平日、特定の曜日等)を任意に設定して売ることができる市場です(ただし、買い手は取引所会員である必要があります)。
取引方法は、売り手が提示した電気と条件を取引所が掲示し、取引所が買い手を条件順に並べ、その中から最も条件のよい落札者を選定して取り引きされます。
小売電気事業を営むための「小売電気事業登録申請」を行うためには、電力を供給するための電力を確保する方法を決めておく必要がありますが、その方法の1つに「卸電力取引市場」により確保する方法があります。
卸電力取引市場とは、通常は「日本卸電力取引所(JEPX)」から電力の卸を受ける場合を指します。
JEPXの会員となり、電力の卸を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
【資産上の要件】
JEPXとの取引会員は、純資産額が1,000万円以上であることが必要です。
※上記の純資産額は、資産合計額から負債合計額を控除した額とし、JEPXの規定で計算されます。
※1,000万円を下回ることとなったときは、取引を停止されます。ただし、6か月以内に1,000万円以上となったときは、取引が再開されます。
【欠格事項】
次の各項目に該当する方は、JEPXの取引会員になることができません。
- 破産者で復権を得ない方
- 関係法令への重大な違反を行った方
- 役員に暴力団員などが存在する方
- 暴力団員などが事業活動を支配している方、その他の理由で信用がないと認められる方
- 会社更生や民事再生などの途中の方、外国法令上これらと同様に取り扱いされている方
- 禁錮以上の刑(相当する外国法令による刑を含む)に処せられ、その執行が終わった日、またはその執行を受けることがないこととなった日から5年を経過するまでの方
- 成年者と同一の能力を持たない未成年者、成年被後見人、または外国法令上これと同様に扱われている方
- JEPXまたは他の取引所から除名処分を受けた方
【禁止行為】
JEPXの取引会員となる方は、次の各行為をしてはならないとされています。
- 電気の実物取引を目的としない取引
- 仮想の取引をする、または偽って自身の名を用いない取引
- 他者と通謀した上、その他者との取引を成立させることを意図した取引
- 単独または他人と共同して、取引が繁盛であると誤解させるような取引や、相場を変動させる取引
- 相場が自身や他人の操作によって変動する旨の流布
- 託送供給などや、約款に定める接続対象計画差対応電力料金単価など、JEPXの価格を参照する他の料金などを変動させることを目的とした取引
- 相対取引や電力先物市場など、JEPX以外の電力に関連した取引での利益を得る目的で、JEPXの市場の相場を変動させるような取引
- 公表前の発電所の事故情報など、JEPXの価格の形成に影響を及ぼすインサイダー情報に基づく取引
- 不正な価格形成に係る取引
- JEPXの許諾を得ず、取引所関係業務を他者に委託する行為
【JEPXへの預託金】
取引会員は、取引会員ごとに定める額以上をJEPXに預託しなければならないとされています。
預託金がJEPXの定める期日までに行われない場合、取引を停止されます。ただし、一定期間以内に預託が完了すれば、取引を再開することが可能です。