小売電気事業登録に必要な契約締結前の説明義務


これまで電気の販売は一般電気事業者が独占的に行っていましたが、家庭・小規模事業所向けの電気の販売が自由化され、小売電気事業者の登録を受ければ一般家庭を含めた全消費者に電気の販売を行えるようになります。
ではどのように小売電気事業者の登録を受ければいいのでしょうか?

まず登録については、経済産業省の電力取引監視等委員会に対して、意見聴取を行うこととされています。
小売電気事業者に対して供給力確保義務、契約締結前の説明義務、契約締結時の書面交付義務、苦情処理義務等が課されていて、登録申請の書類でこれらの体制について審査が行われます。

事業を計画する上で具体的にどういった体制が必要なのか事前に確認をしておかれるといいでしょう。
ここでは、契約締結前の説明義務について説明をします。

小売電気事業者等は、需要家と小売供給契約の締結又は、媒介等をしようとするときは、料金その他の供給条件について、需要家(※)に対し説明することが義務付けられています。

この説明をするときは、需要家に対し、料金その他の供給条件を記載した契約締結前交付書面を交付しなければなりません。

(※)需要家とは電気の供給を受けて使用している一般家庭等のことです。
ではどういった内容を記載する必要があるのでしょうか?

一般的な情報提供について

  • 需要家が新たな需要場所に入居する際の小売供給契約の申込対応
    需要家は新たな入居先での電気の使用を開始する場合には、電気使用開始前に小売電気事業者と小売供給契約を結ぶことが必要となります。
  • 需要家が無契約状態となる場合に関する手続き等の説明
    小売供給契約について需要家がクーリング・オフをした場合や小売電気事業者から解除された場合などには、需要家が無契約状態となってしまい、電気の供給が停止されるおそれがあります。
    そのため、他の小売電気事業者と小売供給契約を締結するか、最終保障供給を申し込む必要があることを説明する事が望ましいとされています。
  • スイッチングの際の旧小売供給契約に関する解除及び違約金等の説明
    需要家がスイッチングをする場合、切替え前の小売電気事業者との間の小売供給契約の解除が必要となり、また当該解除に伴い違約金等が発生することがあり得ますが、需要家がこれらを認識しないままスイッチングをしてしまう事態が想定されます。
    このため、切替え後の小売電気事業者は、当該需要家に対し、供給条件の説明の際、旧小売供給契約の解除が必要となること及び当該解除の条件によっては、解除により違約金等の発生等の需要家の負担が生じる可能性があることを説明することが望ましいとされています。
  • 高圧一括受電や需要家代理モデルにおける説明など
    高圧一括受電事業者は、最終的な電気の使用を希望する方から高圧一括受電による一の需要場所内での電気の提供サービスの利用申込みを受けた場合には、当該者に対して小売電気事業者に求められるものと同等の説明・書面交付を行うことが望ましいとされています。
  • セット販売に係る複数の契約の契約期間が異なる場合における解除の条件の説明など
    セット販売に係る契約を締結しようとする場合、小売電気事業者等は、小売供給契約の解除時の違約金等に関する説明に加えて、需要家に対し、当該セット販売に係る複数の契約を同時に解除する場合には常に違約金等が発生することについて、適切に説明することが望ましいとされています。

問題となる行為として以下の2点に気をつけなければなりません。

  • 供給条件の説明義務及び書面交付の不遵守
    需要家と小売供給契約を締結したときは、遅滞なく、小売電気事業者等の氏名及び住所、契約年月日、料金その他の供給条件を記載した契約締結後交付書面を交付しなければなりません
  • セット販売時の必要な説明及び契約締結前・契約締結後交付書面への記載の欠如
    電気と他の商品・役務のセット販売を行う場合、電気料金の額の算出方法については明示する必要があります。
    また電気料金とそれ以外の商品・役務提供の対価に割引額を振り分けた上で、電気料金の売上高を報告する必要がある点には留意が必要です。